姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③
「――なるほど、やたらその男は肉を食っていたわけだな」
訂正と矢印でメモ用紙がジャングルになった頃、
おっちゃんが漸く結論を出し、姉さんがこくこくと頷いた。
「……って、それ何か役に立つ情報なの?
俺、話聞いてた中で、ジャーキー独り占めしてたのとか、
普通に意地汚いって思っただけだったんだけど……」
「ええ、間近で見たら凄かったわ。
あまりの迫力に、誰も何も言えなくなっちゃったもの」
「まあね。びっくりだろうね。きっと」
おっちゃんは、食後のお茶を啜りながら、
「要するに、『狼』としての本能に、抗えなくなってきてるって事だろ。
つまり、『肉』への欲求が、抑えられない。
……人狼にとって、一番身近にいて弱くて美味しいのは、普通の人間だ。
……『狩り』の時は近いぞ」
急に声が真剣味を帯びたものになり、思わず身震いがする。