姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③



おっちゃんの鋭い眼光に、射抜かれた気がした。


「……でもさ、それなら四六時中その狼男を監視してればいいんじゃないの? 

あるいは、今のうちに捕まえるとかさ」
 
俺の提案に、おっちゃんは力無く笑った。

「そーれが出来たら苦労しねえや。

今んとこさ、確証はあっても、状況証拠しかねえから、

現場を押さえない限り無理なんだ。

人間ならさ、被害者と加害者の間に、『凶器』という架け橋があるだろ? 

それが調べられれば、大分捜査は進展するし、

犯人を突き止めて逮捕も出来るかもしれない。

けど、こういう事件に至っては、皆凶器は自分の体だ。


本人を捕まえる以外、無理なんだ。

人権保護とか色々絡んでくるから。……一応、そういう決まり」

「ふーん。何だかんだ、危ないし面倒なのね……」

「そしてテミスは万年人員不足に陥っている。

……だから、一人ひとりの負担が大きいってわけ。

やる事多くて参っちゃうぜ」
< 153 / 317 >

この作品をシェア

pagetop