姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③
おっちゃんの鋭い眼光に、射抜かれた気がした。
「……でもさ、それなら四六時中その狼男を監視してればいいんじゃないの?
あるいは、今のうちに捕まえるとかさ」
俺の提案に、おっちゃんは力無く笑った。
「そーれが出来たら苦労しねえや。
今んとこさ、確証はあっても、状況証拠しかねえから、
現場を押さえない限り無理なんだ。
人間ならさ、被害者と加害者の間に、『凶器』という架け橋があるだろ?
それが調べられれば、大分捜査は進展するし、
犯人を突き止めて逮捕も出来るかもしれない。
けど、こういう事件に至っては、皆凶器は自分の体だ。
本人を捕まえる以外、無理なんだ。
人権保護とか色々絡んでくるから。……一応、そういう決まり」
「ふーん。何だかんだ、危ないし面倒なのね……」
「そしてテミスは万年人員不足に陥っている。
……だから、一人ひとりの負担が大きいってわけ。
やる事多くて参っちゃうぜ」