姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③



エリアルが手から提げたビニール袋からは、

ワインボトルとビールの缶らしきものが顔を覘かせていた。

「あ! ……忘れてた」

「やっぱりね」
 
すると、その様子を見ていたおっちゃんが、いそいそとソファーから降りて、

「ヒュ~気が利く~ぅ♪」
 
と、喜んでいた。

俺も、確かにエリアルが姉さん以外の誰かに気を遣うなんて、ちょっと珍しいな、と思う。
 
しかし、

「おっと、忘れるところだった。孝、これ返すよ」

「ん?」
 
エリアルは、ポケットから出した何かを、俺に投げて寄越した。


……俺の財布だ。



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