姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③
床に落とされた俺は、携帯電話を何とか死守した。
……念の為、コピーをいくつかカードに保存する。
ざまあみろ、吸血鬼。
「姉さん、エリアルの写メ見る!?」
「え、見る見る。っていうか、頂戴っ」
「駄目ッ! 孝、もう一度僕を撮ってくれ!
今度はちゃんとキメ顔で……」
「やーだよーうだ!」
「あれ? メール来てる……」
赤外線通信をしようと、携帯電話を開いた姉さんの顔が、
だんだん強張っていった。
「嘘……私、こんな話聞いてない……」
「どうしたの、姉さん」
「お兄ちゃん、大変よ!
他の人に頼んだら、もう間に合わない!
狼が動いたわ!」
室内が急に、ひやりとした。
全員の表情が険しくなる。おっちゃんが尋ねた。
「……メール、誰から?」