姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③



おっちゃんが、手を挙げた。

ちらりと、エリアルが露骨に嫌そうな顔をしたのが見えた。

……怪力なんだから、大の男一人抱えるくらい、訳ないくせに。

「でもそれじゃ、方向が分からないじゃない。

お兄ちゃん、私が行ってる学校がどこにあるか分からないでしょ?」

「大丈夫だ、携帯のナビ見れば」

「迷子になったら困るのよ! 

一刻も早く行かなきゃならないんだから」

「じゃ、こうしよう! 

エリさんが俺を負ぶって、小夜っちを抱えて飛んでく!」

「俺は?」
 
俺が訊くと、無常にもおっちゃんは短く切り捨てた。

「来なくていい」

「やだ!」



「なら来ても良いけど、ちゃりんこだよ!」


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