姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③
遠い思い出
************
小学校に入学して、すぐの頃だっただろうか。
授業で家族の絵というのを描いた時、俺の絵を見た担任は怪訝そうに首を傾げた。
「ねえ、銀司君。この左の人は、お母さん?」
「うん」
絵は、白い画用紙にクレヨンで描いた。
一番左にいるのが、三角から足が突き出している、
ロボットみたいにガタガタのバランスの人間――スカートを穿いている母親。
「真ん中にいるのが、銀司君?」
「うん」
自分はその中で一番背が低い、やっぱりガタガタラインの人間。
好きだから、近くにサッカーボールも描いた。
丸が上手く描けなくて、歪なおにぎりが転がっているように見える。
「じゃあ、右の人はお父さん?」
「うん」
ここまでくれば当り前ではないか。
そう思ったのに、担任は尋ねて来た。