姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③



そしてもちろん次の日から、いなくなったたっくんを巡って、街中が大騒ぎになった。

ホームレスや徘徊老人が行方不明になるのとは、訳が違う。

俺は、その事にひどくショックを受けていた。
 

集会が開かれた。

大人達が心配している。

先生達が、誰かれ構わず生徒を捕まえては、何か知らないかと訊く。

学校や街の至る所にたっくんのポスターが貼られ、ニュースにもなった。
 



言えない。

皆が探してるたっくんは、うちにいるなんて。

少しずつ肉を削られながら、もうすぐ冷蔵庫の中で骨になるところだなんて。
 
しかし、俺がどんなにその事で母を責めても、母は虚ろな目をして、

「レイコ」と名付けられた骸骨と、一方的なお喋りをしているのだった。



「ねえ、レイコ~……最近、何だかずっと銀司がピリピリ怒ってるのよ。

どうしたらいいと思う~……?」


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