姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③
まるで、電話の向こう側にいる相手に話しかけるように。
母は、暇になるといつも、後頭部のひしゃげた人骨に、語りかけていた。
その骨はかつて、母の友人だったのだという。
だけど、母が殺したのだともいう。
理由は、食べる為。本当にただ、それだけだった。
父が望み、母が手を下す。
その事について二人は、悪いとも怖いとも思っていないらしかった。
それが、二人の倫理だった。
「困るなあ、もう……私だって、いつも頑張ってるのに。
何が、気に入らないのかしら、銀司ったら……。
それに、あの人はいつも『解体』は手伝ってくれるけど、
外に埋めに行くのは嫌がるし……まあ、『解体』の時につまみ食いが出来ても、
埋める時はもう食べるところが無いから嫌なんでしょうけどね。
ねえ、レイコぉ……」