姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③
 


銀司は大仰に両手を挙げてみせた。その手はヒトの手というよりは、獣のものに近かった。

五指の爪は揃って尖っているし、掌の色も少し、肉球っぽかった。


「俺、腹減ってるんだよね。

でも、肝心の子が来てくれない――と思ってたら、いきなり目の前に、予定外の食べやすそうな子が現れた。

……この先は、考えなくても分かるよねー……?」


「勝手言いやがる」
 
体制を立て直した乙矢は、いつの間にか銃を構えていた。

もちろん、銃口は銀司に向けられいる。


「人間を食うのはルール違反だ。お前は、罰を受けるべきだよ」
 
すると銀司は鼻をふんと鳴らし、つまらなそうに言った。

「あーあーうぜー……。

別に俺、危害加えてないよね? 

ほら、あんたらの知人とか食べたわけじゃないんだからさ、そういうふうにギスギスすんのやめない? 

青子ちゃんだってまだだし、小夜子ちゃんに関してはちょっとからかっただけだし。

あ、さっき壁破り突進したのは未遂だから、まあノーカウントってことで……」


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