姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③



「ノーカウントだと! 

俺は今しがた落っこちて痛い思いしたってのに!」
 

乙矢は激昂した。


「てめえらは既に充分に俺に危害加えてんだよ! 

俺の家放火したくせに! 

お陰で今は肩身の狭い居候暮らしだ! 

何て事してくれたんだ! 

最近ちょっと『昔みたいで楽しいな』なんて思い始めちゃったじゃねーか! 

これでまた少しして一人暮らしに戻る俺の寂しい気持ちがお前に理解できるのか!? 

アア!?」





「……………えっと」
 

小夜子は、何かを言いかけてやめた。


「……………」


エリアルは、眉間に皺を寄せたまま、何かを考えていた。


「……………」
 

銀司はたっぷり黙ってから、小さい声で「何かごめん」と呟いた。

いつの間にか狼モードが解けて、人間の姿に戻っていた。

集中が切れたらしい。


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