姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③
乙矢はそれでも銀司を睨んだまま、「反省してるなら避けるなよ」と言った。
「いや、避けるし普通に。
……だってそれ、『銀の弾丸』でしょ?
当たったら死ぬじゃん俺」
「大丈夫、この弾は死なないように加工してある。ただちょっと……」
――バァン!
「……痛すぎるだけだ」
唇まで垂れてきた血の味に、はっと我に返る。
銀司の頬に、じりっとした痛みが走った。
――ドクン!
「ぐっ……!」
銀司は自分の頬を押さえ、前のめりになった。
次第に増していく痛みに、歯を食いしばる。
掠っただけでこんなにも苦しい……まともに食らってしまったら、激痛なんてものではないのだろう。
乙矢が二発目を撃とうと標準を合わせた時、銀司は再び狼になり、咆哮した。
耳をつんざくような大音声に、乙矢はとっさにびくつき、その隙を突いた銀司は、一気に距離を広げた。
「危ねえな! ……いきなり撃つとか何考えてんだよあんた。
だから嫌いなんだよ『テミス』の人間は!」
「何だ、気付いてたのか」