姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③
 


乙矢はそれでも銀司を睨んだまま、「反省してるなら避けるなよ」と言った。

「いや、避けるし普通に。

……だってそれ、『銀の弾丸』でしょ? 

当たったら死ぬじゃん俺」

「大丈夫、この弾は死なないように加工してある。ただちょっと……」

 
――バァン!


「……痛すぎるだけだ」
 
唇まで垂れてきた血の味に、はっと我に返る。

銀司の頬に、じりっとした痛みが走った。
 

――ドクン!


「ぐっ……!」
 
銀司は自分の頬を押さえ、前のめりになった。
 
次第に増していく痛みに、歯を食いしばる。

掠っただけでこんなにも苦しい……まともに食らってしまったら、激痛なんてものではないのだろう。
 
乙矢が二発目を撃とうと標準を合わせた時、銀司は再び狼になり、咆哮した。
 

耳をつんざくような大音声に、乙矢はとっさにびくつき、その隙を突いた銀司は、一気に距離を広げた。


「危ねえな! ……いきなり撃つとか何考えてんだよあんた。

だから嫌いなんだよ『テミス』の人間は!」

「何だ、気付いてたのか」



< 193 / 317 >

この作品をシェア

pagetop