姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③
 


乙矢に打撃を与えたのは、林檎ほどのサイズのコンクリート片だった。

取り落とした銃を拾った乙矢は利き手に痛みを覚え、額に汗をにじませた。

……折れている。


「……なあ、武器持ってるテミスのあんたは、普通の人間だよね。

あと、当然小夜子ちゃんも。

……で、そっちのあんたは吸血鬼だろ? 

そんだけ他人の血の匂いさせてんだから、違う訳ないよねえ」
 
狼は、長い舌をべええぇと出して嘲笑った。

じわじわと、人間の姿に戻っていく。

「……何で、人間に協力してんだよあんた。

吸血鬼のくせに。あんた、人の血を吸うんだろ? 

だったら、俺と同じじゃん。

あんたはヒトの血を吸う。

俺は、ヒトの肉を食う。

何が違うんだよ。




同じだろ? どっちも『ヒト』に『危害』を加えてんじゃんか。

……何そっち側で澄ました顔してんだよ、偽善者がよ……!」
 

エリアルは、銀司をじろりと睨み上げた。

銀司は瞳をぎらぎらとさせながら、不敵に笑っていた。



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