姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③
リベンジ
エリアルは、外壁を貫通して建物の中にあったカウンターに全身を打ちつけられたところで、止まっていた。
そこはどこかのスナックのようだったが、閉店したのか定休日なのか人はいなかった。
もし見付かったら大変だ。何せ器物損壊の現行犯だ。ああよかった。
でも僕は加害者ではなく被害者なんだけど……。
(油断していた、という表現より、
一瞬本気で怖かったから隙が生まれた、と言った方が正しいのかもしれない……)
エリアルは瓦礫の中で舞い上がる埃にむせ返りながら、上体を起こした。
……幸い、『狼』の血は被っていない。口の中にも入っていない。
エリアルにとって、異種の妖と戦う事には、それなりのリスクがあった。
それを覚悟した上でテミスに加わったつもりではいたが、
やっぱり自分はこれを怖れていたのかと思うと、恥を通り越して沈んだ気持ちになった。