姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③

リベンジ

 


エリアルは、外壁を貫通して建物の中にあったカウンターに全身を打ちつけられたところで、止まっていた。

そこはどこかのスナックのようだったが、閉店したのか定休日なのか人はいなかった。

もし見付かったら大変だ。何せ器物損壊の現行犯だ。ああよかった。

でも僕は加害者ではなく被害者なんだけど……。


(油断していた、という表現より、

一瞬本気で怖かったから隙が生まれた、と言った方が正しいのかもしれない……)
 
エリアルは瓦礫の中で舞い上がる埃にむせ返りながら、上体を起こした。

……幸い、『狼』の血は被っていない。口の中にも入っていない。


 
エリアルにとって、異種の妖と戦う事には、それなりのリスクがあった。

それを覚悟した上でテミスに加わったつもりではいたが、

やっぱり自分はこれを怖れていたのかと思うと、恥を通り越して沈んだ気持ちになった。



< 197 / 317 >

この作品をシェア

pagetop