姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③
援軍登場
――いくら、欲しいと言われたって。
それが、『間違い』だと分かっているなら、
誰かがそいつを止めなくちゃいけないんだ。
一番近くにいる、誰かが……。
(駄目だ、もう言えない……)
もう自分は今度こそ死んでしまうかもしれないな、と覚悟した孝は、
突然目の前に現れた氷の壁に目を見張った。
―――じゅぼううううううぅぅううう……!
炎の塊を受けた氷の壁は音を立てて溶け、辺りに濃い水蒸気が漂った。
濃い湯気がどっと押し寄せ、孝は咳き込んだ。
「この氷……まさか……!」
少し離れた場所から、憎々しげな喜咲の声がした。
今、何が起こったのだろう……?
変だな、俺、助かってるよ。
孝は呼吸を整えながら、現状がよく理解出来ずにに茫然となっていた。