姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③
しかし、
「ぼうっとしてないで、さっさと立つです!」
「………あぇ?」
突然、奇妙な敬語を喋るグレーの髪の女性に、腕を引っ張られ、正気に戻った。
「死ね、偽善者ども!」
すぐに喜咲が次の炎を放つが、女性が手をかざすと、
空中に氷の塊がいくつも現れ、炎と相殺した。
「あ、あんた誰……」
孝がびくびくしながら尋ねると、女性は走りながら「はじめましてです」と言った。
「……私は、テミスに所属する『雪妖』の一人、山城雪絵。
君のお兄さん……乙矢さんの恋人ですよ」
「へえ………って、ええ!
おっちゃん、彼女いたの?」
「いるですよ、ここに」
雪絵は、にっこりと笑って自分を指差した。