姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③
「まあ、『彼女』というよりは、将来を誓い合った神聖な仲ですが……」
雪絵は、ぽっと頬を赤らめた。
肌がとても白いので、よく分かる。
だが、そんなひと時でさえ、防御の手は緩めない。
追いかけてくる喜咲の放つ炎は、ことごとく彼女の氷や雪で消されていく。
というより、防御よりもやや、こちらが優勢に立っているようだ。
(そうか……あの人、さっきから俺達に際限なくボンボン火を飛ばしてたからな……)
大分、消耗してきたのだろう。
一方で、雪絵はまだまだ余裕だ。
空中に、木の杭のように太い氷柱を何本も作り上げ、一斉に喜咲に急降下させた。
それをギリギリで回避するも、喜咲も無傷では済まなくなってきた。
擦り傷や切り傷から滲む血で、少し服が汚れてきている。
だが、雪絵は止まらない。
孝も何となく彼女に合わせて走っていたが、そろそろ息が上がってきた。