姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③
そして、
「御免あそばせ!」
――ビリッ!
いとも簡単に、彼女の胸元をはだけさせたのだった。
「……って、あわわっ!」
「ええい、うろたえるんじゃねえですよ!」
孝が健全な日本男児としてのリアクションを取っていると、
雪絵はさっさと喜咲の傷口に手を当て、応急処置を始めた。
「雪絵さん、それは……?」
「ギリギリ傷が凍らない程度の冷気を送って、筋肉を収縮させているですよ」
「凍らせちゃ駄目なの?」
「凍ると、細胞が脱水しちゃうから、かえって後で凍傷になるですよ。
……だから、今のうちに連絡を……」
「連絡って、どこに……?」
「決まってるです!」
雪絵は、ポケットに突っ込んだ携帯電話を、孝に投げて寄越した。
「『テミス』関東支部の医療班です!」