姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③



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当たりもしない。

掠りもしない。

どんなに噛み付こうとしても、蹴りかかっても、爪で切りかかっても、

ことごとく回避されてしまう。



夜の吸血鬼は手強いと話には聞いていたが、まったくその通りだった。


自由に宙を飛び回る彼は、むしろ軽やかに踊っているようでもある。


(くそっ……!)
 
銀司は、焦っていた。
 

エネルギー補給の済んだ吸血鬼は、とにかく強い。

さっきまでの動きと、全然違う。

もう不意を突く隙が見当たらない。


そして、何よりエリアルは長年の実戦経験があった。


しかし銀司は、普通の人間を狩った事はあっても、自分より強い『何か』と戦うのは初めてだった。


「がああああっ!」
 

吠えながら、銀司はエリアルに突進し、めちゃくちゃに手を振るった。


動きが読まれている以上、狙いながらの攻撃よりも、闇雲に動いてみたくなった。


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