姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③
テミス
言われた通りの番号を押し、コール音の最中に雪絵に携帯電話を渡そうとした孝は、
『手が離せない』と雪絵に怒られ、彼女の耳元の高さに合わせて携帯電話を支える羽目になっていた。
電話が繋がると、短いやり取りの後、すぐに雪絵は『もういいよです』と孝に言った。
それから、その場が慌ただしくなるのに、大して時間がかからなかった。
孝は、まるで手品か幻を見ているような心地になった。
虫の息の喜咲に手当てをする雪絵と、なす術も無く立ち尽くしている孝。
近くに待機していたのか、突然、彼らの元へ何台もの大型車が到着し、
中からわらわらと人が飛び出してきたのだ。