姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③
孝は何だか気が抜けて、その場に座り込んでしまった。
「それで、君は何と言ったんだ?」
彼は、孝の目線に合わせてしゃがみ込んだ。
「入るって言ったよ。
姉さんと、居候の吸血鬼……」
「おや、君! 怪我してるじゃないか。
ひどい火傷だ……!」
「……エリアルと、一緒に……」
「おい、大丈夫か!」
「………さむい……」
うわ言のように、ぽつりぽつりと呟いた。
遅まきながら孝は、意識が朦朧となっていくのに気付いた。
急に、体に力が入らない。
体力の限界だったのか、火傷のショックなのか、全身ががくがくと震え出していた。
こうなるともう、辺りの騒がしさも、男性の言葉も、耳には入って来ない。
(……青子さんは、無事に逃げたのかな……)
孝は健気にもそんな事を思い浮かべて、気絶した。