姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③
「誰だ、お前は!」
「誰って……この状況で名乗ると思います?」
青年は、皮肉っぽく言った。
しかし、鬼山は聞かずに腕を振り上げた。
敵を狙うが、空振りした。
「危ないですね……別に、そんなに怖がらなくたって、僕は今日は戦いませんよ。
もう帰りますってば」
「逃がさん!」
「あ、やっぱそうなりますか」
しかし、青年に掴みかかろうとした鬼山は、自身の体の重みに耐え切れなくなり、膝を突いた。
急に、体の動きが鈍くなっていた。
その時やっと鬼山は、傍にいたはずの狙撃隊達が、一人残らず倒れている事を知った。
――この煙幕の所為だと気付いた時には、もう遅かった。
「ふう……やっと効いてきたみたいですね。
体が馬鹿でかくてらっしゃるので、それなりに時間もかかるというわけですか。
ふむ、参考になりました」