姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③
「――彼は、合格なんですよ」
青年は、ふふんと笑った。
「これで、銀司君の中で、あなた方『テミス』への憎しみが育ち切りました。
両親を殺され、恋人を殺された彼は、肉体の限界をも超えて、望ましい暴走をした。
……だからです」
「玉野、喜咲は、お前らが……殺した、んだろう、が……!」
「ええ、いかにも。
でも、彼は……そうは思っていないでしょうね」
青年は、いとおしむように銀司を見つめた。
その目はどこまでも細く、開いていないようにも見えた。
「それでは、さようなら」
煙幕が晴れると、誰もいなくなっていた。
鬼山は、やっと駆け付けた構成員達に肩を貸されながら、今日の自分を不甲斐ないと思った。
「ちく、しょう………!
今日も……金棒持ってくりゃ、よかった……」