姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③
謎の金髪野郎
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その数十分前、空にて。
エリアルは、襲撃を受けていた。
「――さすが、伝説の『大吸血鬼』!
どんな荷物を抱えていても、機敏でらっしゃる!」
突然だった。
小夜子を抱えたまま、銀司を追って空を急行していたエリアルは、
背中に鋭い痛みを覚え、ぐらりと体勢を崩しかけた。
「エリアルっ!」
小夜子が、悲鳴に近い声を上げた。
「っぐ……大丈夫だよ、小夜子……」
エリアルは、瞳を赤く光らせた。
彼が見据える先には、一人の青年がいた。
まるで空を歩いているように、一歩ずつこちらに近付いて来る。
青年は、肩までのウェーブがかったふわふわの金髪をなびかせて、
パチパチと、どこか白けたような、やる気のない拍手をしていた。
「誰だ!」
「教えてあげませんよ」
答えと同時に、何か鋭いものが、小夜子の脚を掠めた。