姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③
どう跳ね返っても攻撃出来るように作られた形なのだろう。
しかも、弓で飛ばしているのではないらしかった。
『矢』は、連続的に放たれた。
エリアルは、まともに受け流す事は困難だと悟り、飛行に集中した。
急降下や急上昇、時には旋回を何度も繰り返し、前後左右から向ってくる『矢』を、何とか振り切ろうとした。
おそらく、目の前の青年は『フェニックス』とみて間違いない。
……しかも、過去の自分のことを、いくらか知っているようだ。
青年は、終始笑顔だった。
「スピードが鈍っていますよ!
そんな事で、戦えるとお思いですか!」
「……エリアル! 手を離して!」
小夜子は、浅い呼吸をしながら言った。
そして、地上数十メートルの空の上で、じたばたと暴れだした。
エリアルは、慌てて小夜子を抱え直したが、彼女は言う事を聞かない。
「落として!」
「なっ……何を言ってるんだ……」