姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③
青年は笑いながら、体を起こした。
エリアルは冷たい表情で、それを見ていた。
異常な再生能力は、吸血鬼のものと似ていたが、彼の速度はエリアルの再生よりも早い。
「まあ、いいでしょう。
……今日の僕は、どうかしている。
ちょっと、寄り道をしすぎましたね。
……それでは、僕は本来の用事を済ませてくるとしましょう……」
エリアルはまだ警戒していたが、彼はもう帰りたいようだった。
「……ごきげんよう」
青年は、そのままの姿勢で、急にふっと消えた。
途端に、緊張が解けた。
エリアルは、彼の胸に顔を押し付けて、
青年のグロテスクな再生シーンを見ないようにしていた小夜子に、「終わったよ」と言った。
彼女はびくりとなると、ゆっくりとエリアルを見上げた。
少しして、先ほどの衝撃が蘇って、彼女は赤面した。
そして、そんな彼女を見て、エリアルも少し恥ずかしくなった。