姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③



「前に入院した時は、平気だったのにな……」
 

ぼそりと呟くと、すかさずおじさんが言った。


「なんだ、君は前にも入院した事があるのか?」


「うん、まあ、色々と……」

「病気か?」

「ううん、怪我」

「誰にやられたんだ」

「……吸血鬼」


「エリアルか?」

 
さらりとその名前が出てきた事に驚くと、彼は改めて自己紹介をした。


「俺は、テミスの実戦部隊の鬼山和仁という。君は?」


「……葉山、孝」

「高校生か?」

「うん」

「学校楽しいか?」

「何で初対面なのにそんな事訊くんだよ……」


「初対面じゃないさ。昨日も会っただろ?」


「まあそうだとしてもさ、変じゃん……」


 
しばらく、そんな他愛のない会話が続いた。


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