姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③
そして、散々彷徨った挙句に雪に倒れ込んだ時に、
それまで憎らしかった雪が、信じられないほど柔らかく感じた。
……安らかな眠りを誘う、羽根布団のように。
眠い。
それしか考えられなかった。
本当なら、死ぬ時というのは絶対に走馬灯とかいうものが見えて、
自分のそれまでの思い出が、次々と蘇ってくるのだという。
しかし、特にそれらしいことは起こらなかった。
……もう、これでいいや。