姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③
一方エリアルは、自分の部屋に向かってくる足音を、
敏感に感じていた。
一つは歩き方の癖から、孝だとすぐに分かった。
一応、足音を忍ばせているものの、
吸血鬼には簡単に分かってしまう音の域なのだ。
もう一つは、見事なものだった。
人間だったら、例え訓練した殺し屋だって聞き取れないだろう。
人間だったら……。
エリアルは、自嘲した。
人間だったら、誰からも狙われなくて済むのに。
弱くたって命を大切に、精一杯生きられるのに。