白衣の王子様の恋愛感 【番外編12月7日up】
「・・・じゃあ、本当に・・・わたしのこと?」
「ああ、好きだよ。」
指先が震える。
違う、これは私の心のガードが外れる振動なんだ。
ずーと、ずーと、欲しくても、望んでも、手に入らないと思っていたのに・・・。
喜びとか、嬉しさとか、そんな言葉では言えない、こらえきらない何かが、心だけじゃなく、身体いっぱいに、それ以上に溢れ出す。
震える手を自分の口に当て、声にならなら声を抑える。
大粒の涙が頬だけじゃなく、手を伝い、落ちて、服に水のしみを作る。
向かいに座っていたはずゆう君が、いつの間にか私の横にいて、私を抱えるように胸に抱きこんでくれた。
ゆう君の香りが近い。
いつもなら落ち着く香りなのに、更に涙を誘う。
どれくらいそうしていたんだろう。
今は感情をコントロールできないから、涙が自分の思い通りにならない。
それでも、やっと涙の終わりが見えた気がする。
メイク、きっと落ちてボロボロだ・・・。
顔から手を外さないまま席を立った。
「どこ行くの?」
一歩踏み出すと、すぐにゆう君に二の腕辺りをつかまれた。
私と同じ様に、ゆう君も立っている。
自分の指の隙間から、ゆう君の目が見えた。
「・・・トイレで顔・・・なおしてくる・・・。」
「ああ、そうか・・・。ゆっくりでいいよ。・・・待ってるから。」
私を捕まえる手を外し、所在が無いゆう君の手は頭をかいていた。
待ってる・・・。
「・・・うん。」
カフェの人に会わないように小走りでトイレに向う。
トイレの鏡には、メイクがすっかり取れている顔が映った。
元々、アイラインとかは、ほとんどして無いから、パンダみたいになることはなかったけど。
それでも、ファンデーションがすっかり落ちた素肌を出すのには、抵抗がある。
涙の後などを綺麗にテッシュなどで拭いて、軽くメイクをなおした。