白衣の王子様の恋愛感 【番外編12月7日up】
「じゃあ、そのときかな・・・?」

「なんですか?」


声を潜めて、少しだけ私の方に上半身を傾けて、話しだす八島さん。

私も八島さんの方へ身体を少し倒す。

まるで密談風景。


「いや~内緒にしてほしいんだけど。阿川としては、もう少し待つつもりだったんだよね。」

「待つ?」


”内緒”も”待つ”も、その意味がわからなくて首を傾げる。


「うん。法子ちゃんはオレたちよりも若いじゃん。だから、もっと他の男を見て、それでも阿川を選ぶなら、そのときは迷わないて。アメリカから帰って来て、しばらくしたらそんな事、言ってたんだよ。君に後悔して欲しくないから、選択権を与えようと考えていたらしいんだけど・・・。」


「けど?」


「法子ちゃんが会社の同僚に狙われている所を見たって聞いたけど?」


”見た”というのは、さっきも話題にした、彼女を連れていたゆう君と遭遇した9月の会社の飲み会のことだ。

恐らく、相手は同期の桧山。


「狙われて・・・それは、ゆう君も誤解しているみたいだけど、本当にただの仲の良い同期で・・・。」


「阿川にはそう見えなかったみたいだね。君は狙われているのも知らないで、ニコニコと相手を信頼しきった顔で側にいたって。隙だらけの君を見て、あいつは自分の気持ちを抑えられなくなったらしいよ。当時の彼女もそれがわかったんだろうね。すぐに別れてたよ。アイツも若いねえ~。」


誤解から、そんな風に決断されても、私のせいじゃないし。

私の事を好きなら、なんで他の子と付き合ったりするのかな?

そっちの方が問題だ。


「それに・・・自分のしている事は、まるで親父さんと一緒だとも言ってたなあ。」


「親父さん?」


首を傾げる私。

親父さんて、私の叔父さんでゆう君の義理のお父さんの”ともちゃん”のこと?





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