白衣の王子様の恋愛感 【番外編12月7日up】
その情景は、理由が付かない涙のフィルターで私はよく見えなくなった。

胸がいっぱいで呼吸をするのが難しい・・・。

唇を強く噛む。

嬉しいくて、悲しい。


それは、結婚式で行われる指輪の交換を思わせるシーンだった。


あくまでも擬似で、私たちには訪れない事・・・。

だから、胸が痛いんだ。

こんなにも・・・。

「・・・ノリ」

指輪が嵌りきった後も、ゆう君の掌には私の左手は乗ったまま。

指輪からゆう君へ視線を移すと、ゆう君はこれまでに見た事が無いような、静かで落ち着いた笑みを浮かべて、私を見ていた。

その笑みから目が離せない。

この笑みは、今は、今だけは私のもの・・・。



沈みきった気持ちが浮上してくる。




「あ!法子!!」



すごくいい私たちの雰囲気を壊すその声に、2人同時に振り向く。

その声は、私達はよく知っている人。

ゆう君の顔は見えないが、恐らく私と同様に目を見開き、驚いているだろう。

その声の主は・・・。




< 86 / 136 >

この作品をシェア

pagetop