白衣の王子様の恋愛感 【番外編12月7日up】
何となく2人の間に沈黙が居座ってしまった。

何か考え込む様子のゆう君に声をかけられなくて・・・。

家まで送ってくれた車の中も、ウキウキして嬉しかった行きとは違い、反対に気まずい沈黙しかなかった。


「ごちそうさまでした。・・・これも、ありがとう。」


車を降りるときに嵌ったままの指輪を顔の位置まで持上げて、お礼を伝える。

頷いたゆう君は、おやすみ、と静かに返して車を発進させた。

テールランプを見ながら、1人になって溜め息が出た。



どうしてこんなことになってしまったのかな?

ほんの何時間か前はあんなにウキウキしていて楽しかったのに・・・。

なんで、ママたちと会っちゃったのかな。

”おうちレストラン”なんて行かなきゃよかった!

後悔って本当に後からするものなんだね。




「ただいま~。」

いつもの癖で、家に入った瞬間に挨拶を声にだしてしまった。

ママに怒っていたはずなのに!

駐車場にはママの車があったし、家に電気がついていたから、ママはもう帰っている。

パパの靴が無い所を見ると、パパはまだ帰っていないみたい。


「あら?帰ってきたの?お帰り~。」

冷やかす口調が、再び怒りの導火線に火をつける。

「もう、ママ!違うからね!」

怒りに任せて大きな声で否定する。

「何が?」


リビングのテーブルに大きく本日の新聞を広げて、それを隅々まで見ながら、お風呂上りの顔にゲルマニウムのコロコロを滑らしているママ。

テーブルを挟んで向い側に私が座っても、視線さえ向けない。



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