ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
そこで彼は止まった。
彼の強引な行動にしばらく驚きの声を上げていた私も、首にしがみついていた腕をゆるめて、深く呼吸をした。
「シュヴァルツさん、心臓に悪いです……」
人々の声は遥か遠く離れ、何も聞こえない空の空間だけにふたりで浮いていた。
まっすぐ下では置いてききぼりのノア君が鳥かごの中で私を心配しているだろうけれど、目を凝らしても、どの家だったか分からない。
さっきまで仕切られたこの街に紛れて泣いていたはずなのに、そのときの私すら遠く感じた。
「極上の血はこの世界と引き合うために廻っている。お前が館に惹かれるのは、その血がお前をこちら側へと導くからだ」
聞かされた瞬間、この血液を全身に送り出している心臓がズキンと痛んだ。
体を廻っている血が私の運命を操っている。