ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
私の不幸体質はこの“極上の血”が関係しているのかもしれない、しかしこの世界と引き合うということには何のありがたみも感じることなく、真っ先にそれを疎ましく感じた。
「私の不幸体質は、血のせいだったんですね」
「不幸ではない。今までずっと血に守られてきたはずだ」
ぐにゃりと視界が歪んだ。
月の光で美しく照らされている彼の白い顔は、いたって真剣なものだった。
「いえ、そんなわけありません。私はいつだって不幸でした」
「思い違いだ」
思い違いじゃない。
この血は私を孤独に追いやってきただけで、守られたことなんて一度もなかった。
それは誰にも否定できない事実だ。
私は初めてシュヴァルツさんのことを恨めしく思い、止めていた涙とともに感情を吐き出した。
「シュヴァルツさんは何も知らないからそんなこと言えるんです!」
私が初めて感情をむき出しにして叫んでも、彼は見慣れたように見つめているだけ。
動じない彼に戸惑ったのは私のほうだった。
シュヴァルツさんはこんな私を見慣れている。
こうして泣きながら弱音を吐く私を、ずっと館から見ていたのだ。
そう思うとひどく恥ずかしくなった。