ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
「私はずっと孤独でした。どこへ行っても、そばにいる人を不幸にしてきたんです。不幸じゃないなんて、簡単に言わないで下さい」
「アカリ」
彼が私の頭をそっと胸の中に抱いた。
彼のワイシャツに押し付けられるとじんと胸が熱くなり、今までの彼の否定的な言葉について謝罪を受けている心地になり、目を閉じてそれを受け入れた。
瞳に溜まっていた涙が、ぽつりと雨のように街へ落ちていく。
「……泣くな」
泣くなとは言ってない、と言っていたのに、ほんの少し困惑している彼の声色が、不思議と愛しくなった。
高ぶった感情が落ち着きを取り戻していく。
「すみません、また恥ずかしいところを見せてしまって……」
「俺はお前に不幸にされた覚えはない。ともにいてどんなことが起きようとも、お前を守る。俺の前では自分を卑下するな」
「シュヴァルツさん……」
言われ慣れていない、そしてシュヴァルツさんが言ってくれるとは到底予想していなかった言葉を掛けられ、一瞬戸惑い、そのあとすぐに嬉しさが込みあがった。
熱い眼差しを彼に向けていると、彼はふいっと顔を逸らし、「気は晴れたか。もう降りるぞ」と呟く。
もしかして私を慰めてくれたんですか?と聞き返す前に、景色が下がり始めた。
『俺はお前に不幸にされた覚えはない』
こんなに迷惑をかけているのに、私といて、彼は不幸だと感じないのだろうか。
隠れるように彼の胸に顔を埋めた。