ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋

昼間アルバさんから手に入れた旅行許可者のリストが近くの棚にしまわれていたことを思い出し、私は僅な灯りの中でそれを探った。

「あった」

掴んだ羊皮紙の束を持ってきて、さっそくパラパラと流し見た。

せっかく犯人の手がかりを手に入れたというのに、シュヴァルツさんはリストを見ようともせずに寝てしまったし、私が力になれるかもと打診したのに流されたまま。

この謎を解いて、シュヴァルツさんに、少しでも恩返しがしたいのだ。

「……アカリ様?」

背後からの超音波のような声は、シュヴァルツさんではなくノア君だとすぐに気づいた。

私は鳥かごの中のノア君に、シーッと人差し指を立てた。

「眠れないのですか?」

彼は小声になり、心配そうに尋ねる。

「いいえ。起こしちゃってごめんなさい。犯人のことが気になって、少しリストを見てみようと思ったんです」

「そうですか。無理はしないで下さいね」

「はい。……ねえノア君。シュヴァルツさんはすぐにでも犯人を探しに行くと思ってたんですけど、なんだか、ダークナイトという人に会うことを優先しているみたいですね」

「それはそうですよ。アカリ様のためですから」

ノア君の返事に、私は手元を止めた。

「私のため……?」

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