ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
私はリストに目を戻した。
整理すると、人間界の行方不明事件は、最初が先月十日の夜、次が三十日の夜、そして水無月さんがいなくなったのが三日前の夜、私がその次の日の夜。
この四つの時間帯すべてで人間界にいたヴァンパイアに絞ればいいということ。
各人が人間界に渡った日と、許可が出ている期間を照らし合わせると、一人ひとりの滞在期間が割り出せる。
まずは一ページずつ丁寧に、各人の滞在期間が事件発生時刻に当てはまっていないか、確認していった。
「違う、違う、違う、この人も違う……」
不思議なことに、四つの時間帯どころか、ひとつの時間帯にすら該当している人がいない。
ページをめぐる同じ動作を繰り返し、ついにリストは最後のページまで一周した。
四回の旅行記録がある人は複数人いるけれど、その全員が四つの時間帯についてはすべてヴァンパイアの世界へと戻っているのだ。
「どうして、誰もいないの……?」
百ページすべてに目を通したのに、当てはまる人は見つけられなかった。