ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
「……あぁ?シュヴァルツ?なんだよ寝てたのによぉ」
彼は反動をつけて体を起こしながら、あくびをしてガシガシと頭を掻いていた。
「またサボりか。起きろ」
「うるせえなぁ、……お!シュヴァルツ、女連れかよ。めっずらし」
その人は起きるとすぐに、私のことを見つけ、好奇心を全面に押し出した表情にコロりと変わる。
怖くなってシュヴァルツさんの背中の後ろに隠れた。
「お前に頼みがあって来た」
「だーっ!またかよ!お前って無理なことばっかり頼んでくるから、聞くの嫌なんだよな」
アルバさんはお金で動く高官だと聞いていたからどんな悪党だろうと構えていたけれど、彼の表情は豊かで愛嬌があった。
私はシュヴァルツさんの背中から、もう一度彼のことを見てみる。目が合うと、ヒラヒラと手を振ってきた。
振り返すべきなのか、モジモジと手を準備すると、シュヴァルツさんはそれを絡めとって降ろさせた。
「可愛いじゃん。なあお嬢ちゃん、名前何て言うの?」
アルバさんはシュヴァルツさんにかまわず、私にそう尋ねてくる。
名乗っていいのか、私には分からない。