ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
するとシュヴァルツさんは繋いでいた手を引っ張り、私を正面に連れてくると、胸の中に抱き寄せ、隠した。
「……勝手に話しかけるな。俺の女だ」
またふわふわと夢見心地になった。
彼が嘘をつくときだけに聞ける、普段なら言いそうもない“俺の女”という言葉は、私の体を熱くした。
「マジでお前の女なのか!?シュヴァルツが!?女!?」
「アルバ。本題に入るぞ」
一通り驚いた後、アルバさんは立ち上がって衣服についた埃を叩いて落とすと、腕を組んで柵にもたれかかった。
なんだかんだと言いながら、シュヴァルツさんの話を聞く体勢を整えている。
「俺の休暇中に旅行許可が出た者のリストが欲しい」
「それなら昨日ネロからお前に渡すよう頼まれてるぜ。ほらよ」
懐から分厚い紙の束を取り出すと、それを差し出した。
しかし彼は、シュヴァルツさんが束の端を掴んで受け取ったにもかかわらず、なかなか手を放そうとしない。
「何のつもりだアルバ」
シュヴァルツさんの面倒そうな言葉に、アルバさんはニッと牙を見せて笑った。
「タダなわけねぇだろ。金貨二十枚だ。そのリストには、俺が対象者の個人情報を調べて付け加えてある。お買い得だぜ」
「最初からそう言え」
シュヴァルツさんは懐に手を突っ込んで、バラバラと金貨を出すと、その塊をアルバさんの手に持たせた。