ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋

いくつか足下にも金貨がこぼれ落ちたが、ふたりとも落ちたものを拾う素振りは見せない。

先程、この金貨を三枚出して、三人が豪華な宿に一泊できたのだから、一枚でも価値は相当なものだろう。

この紙の束のために二十枚も?

よほど価値があるということだろうか。

「まいどあり。ほら持ってけよ。何を調べてるんだか知らねえが、いい情報だと思うぜ」

シュヴァルツさんはすぐに、渡された書類の束の表紙を開き、最初のページから確認を始めた。

私とノア君も、両サイドからそれを覗き込む。

一ページにひとりずつ、顔写真つきのプロフィールが載っていて、厚さから想像するにざっと百ページはある。まるで大量の履歴書のようだ。

プロフィールの内容は、本名、年齢、性別、来歴、住所、家柄。人間界へ行く目的に、特記事項。

手書きで細かく書かれており、分かりやすい。几帳面な仕事だ。これ、全部アルバさんが……?

見た目からは想像つかない一面に感心したが、プロフィールの年齢を見るとどのヴァンパイアも三桁になっており、ゴクリと生唾を飲んだ。

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