ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
「アルバ。本当にこれで全部か」
「おう。扉の開閉回数とも合ってたし、お前の休暇中に人間界旅行に行ったのは、そのリストに載ってる奴らで全部だ」
パラパラとめくられていくページを眺めていると、同じ顔が何枚か続くこともあると気がついた。
「シュヴァルツさん。同じ人が何度も人間界へ行くこともあるんですか?」
「ああ。戻った輩が数日も経たずにまた行きたいと言い出すのはよくあることだ。……俺なら通さないが、この門番は仕事が粗末なようだ」
シュヴァルツさんは少し怒った様子でそう言った。
「あの、シュヴァルツさん」
私はアルバさんに聞こえないように、シュヴァルツさんの耳元に小声で話しかけた。
「どうした」
彼は身長差を埋めるように、少しこちらへ耳を寄せた。
「私、人間界で行方不明事件が発生した日時を覚えています。そのときに人間界にいたヴァンパイアが、犯人だということですよね?」
心なしか、声が輝いていたと思う。
やっとシュヴァルツさんの役に立てる。そう思ったのだ。