ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋

しかし、シュヴァルツさんは私の言葉に眉をひそめただけで、持っていたリストの束をすぐに懐へ仕舞うと、かわりにアルバさんのことを呼んだ。

「ダークナイトという男について知っているか。俺の休暇中ネロが門番に指名した男だ」

アルバさんは苦い顔で「ああ、アイツね」と目を細める。

「そりゃ知ってるさ。普段館にいるお前には下界の噂は耳に入ってこねえと思うが、俺らの間じゃよく知られてる男だぜ。ネロに媚売ってる金魚のフンだろ」

「……それで」

「近々館で開催されるネロ主宰のオークション、ダークナイトはそれの補佐に任命されてる。あの若さで、異例の大出世だ」

私はそばにいたノア君に「オークションって?」と尋ねた。

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