ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋

「年に一度、館に集まる貴族たちに向け貴重な品々を競売にかけるオークションが開催されます。売り上げは財源となるので、政府は毎年力を入れているんですよ」

ノア君はそう教えてくれたけれど、その説明が聞こえていたシュヴァルツさんは「金持ちどもの道楽だ」と否定的な感想を補足し、その不機嫌な顔のままアルバさんに「そのダークナイトは今どこにいる」と急かした。

「オークションの品の搬入が始まってるから、下界と館を行ったり来たりしてるぜ。盗賊どもに狙われないよう搬入スケジュールは非公開だから、ダークナイトの居場所なんて知らねえよ。……シュヴァルツ、お前はなんでダークナイトを探してんだ?」

「そいつから扉の鍵を預かっていない」

「それならこっちの世界に人間が迷い込んでから旅行禁止令が出てる。扉の鍵なんかまだ必要ねえだろ」

「色々と事情がある。詮索するな。居場所が分かったら知らせろ」

「ったく」

話は終わったとばかりに、シュヴァルツさんは踵を返し、背中の羽を出現させる。

すぐに抱き上げられ、背後のアルバさんと目が合うと、彼は私にウインクしていたが、彼にペコリと首だけのお辞儀を返す前に、体は上空へと舞い上がり、彼がいる時計台があっという間に小さくなっていった。

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