ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
上空から議事堂周辺を見ると、綺麗に区画を分けるようにレンガの道が通っており、その中には縦長のアンティーク調の家が立ち並んでいた。
「どこへ行くんですか?」
「俺の家だ」
「シュヴァルツさんの?この街にあるんですね」
やがて等分された区画のひとつの道に降り立ち、その三軒目で彼は足を止めた。
レンガ造りの目立たない建物。
本当にここが手品のように金貨を出すシュヴァルツさんの家なのだろうか。
思えば、男の人の家に入るのは初めてだ。
静かに、でも少しずつ、胸がトクンと鳴り出しているのが分かった。
彼は懐から細い金の鍵を取り出し、慣れた手つきでドアを開ける。
「入れ」
躊躇していた私の背中に手を添えられ、促されるままに、玄関の中へ一歩足を踏み入れた。
内装は、ヴァンパイアの館の暖炉のあった書斎と似ている。
縦長の建物だったはずなのになぜかその中は一階建てで、広さはざっと二十畳以上あり、あの外観にこの造りは魔法か何かとしか思えない。
広さのわりに物が少なく、ここで生活している様子はなかった。
そういえば、ずっと館にいる、って言ってたっけ。