ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋

背の低い本棚の上には金の鳥かごが置いてあり、ワクワクして中を覗いてみたが、鳥はいなかった。

シュヴァルツさんがそのかごの入り口を指でつつくと、小さな扉がパチンと音を立てて開く。

「ノア」

名前を呼ばれたノア君はコクリと頷き、彼は背中から自分の羽を出して身を包み込んで丸くなると、ボールの空気が抜けていくように小さくなった。

その黒いボールはやがて卵ほどの大きさになり、私は彼がこのまま消えてしまうのかと思い、たまらず「ノア君?」と声をかける。

すると、その小さなボールからまた二つ羽が生えてきて、本体にはくりっとした目が出現し、やがて、それは“コウモリ”の姿に変わった。

「驚かせてしまいましたね。僕はシュヴァルツ様の使い魔、本来の姿はコウモリなのです!」

いつもよりオクターブ高い超音波のような声で、その可愛らしい生物は言った。

小さな羽をパタパタと羽ばたかせ、シュヴァルツさんが開けた鳥かごの中に入っていく。

もともと可愛い男の子の姿だったノア君が、さらに小さくて愛らしい生き物へと姿を変え、私はたまらず鳥かごに顔を近づけて覗き込んだ。

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