ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
「ノア君、可愛い……!」
その姿を見ると、どうしてもニヤける顔を隠せず、人差し指を鳥かごの外から挿し込み、控えめに寄ってきたノア君の頭を指先でくりくりと撫でてみる。
「アカリ様、この姿を褒めて下さるのですか?」
好き勝手にいじくり回していると、ふいにノア君がそう言った。
一度指を引っ込めると、ノア君が頭の半分を占める大きな瞳に、うるうると涙を溜めているのが分かった。
「ノア君?どうしたんですか!?」
「コウモリというのは古より、下界で人間界でも卑しい生き物の象徴です。本来は、シュヴァルツ様のような高貴なヴァンパイアと主従契約を結ぶなど許されないのです……」
「そうなんですか?そんなふうに思わないですけど……」
ノア君はプルプルと首を左右に振る。
「いいえ。これはシュヴァルツ様の寛大なお心のおかげ。ご迷惑をお掛けしないためにも、普段はヴァンパイアを装っているのです」
“迷惑をかけないために”という言葉は、私の胸に切なく響いた。
誰かのために自分を押し殺すことは、とてもつらい。私はそのことを痛いほど知っている。