ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
「ノア君。私、コウモリのノア君も好きです。だってノア君はノア君ですから」
また指の腹でノア君の頭や背中を撫でると、今度は彼もすりすりと指に体を寄せる。
「アカリ様……。アカリ様は本当にお優しい……」
素直に甘えるコウモリのノア君が可愛くて、私はつい緩んだ顔をシュヴァルツさんに向けた。
彼は黙って見ているだけだったけれど、私の頭をわしゃわしゃとかき混ぜる。
ノア君は瞳をニッコリと三日月のように細め、
「シュヴァルツ様。アカリ様は人間界でも、さぞや人気者でいらっしゃったのでしょう」
と言った。
私はギクリと肩を揺らす。
「こんなにも美しくお優しいのですから」
「……そんなこと、ないですよ」
どうにかそう返事をしたが、不幸体質の自分が後ろめたくて、心の中はザワザワとしていた。
私は人間界では誰ともまともに関わることができない。
目を泳がせると一度だけシュヴァルツさんと目が合って、彼は何も言わず、ノア君の言葉にも答えずに、上着を脱いで椅子にかけた。