ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
「話はもう済んだか」
彼は手袋を外し、机の上に置いた。
さらに襟のタイをほどき、ワイシャツのボタンを上から二つ外しながら、ベッドへと近づいていく。
「アカリ。そこへ座れ」
鳥かごのそばに立っていた私は、彼にそのベッドに腰かけるよう促され、さらにノア君が鳥かごの中で寝たフリを始めたことで、また“あの時間”が来たのだと勘づいた。
体が固くなり、胸がドキドキと騒ぎ出す。
それには緊張だけじゃなくて、期待も混じっていることに、自分でも気づいていた。
手をひかれ、整えられたベッドに腰掛けると、シュヴァルツさんがその前方に立ち、私を見下げる。
肩に手を置かれ、ゆっくりと顔が近付いてきて、まるでキスをするかのように、私はキュッと目を閉じた。
シュヴァルツさんに血を吸われる行為は、たしか一回目より二回目の方が時間が長く、多分、それだけ吸われた量も多かったと思う。
それは彼が私に求めているものが増えたからだと、ぼんやりと考えていた。