ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
ぶつかり合っていた私とシュヴァルツさんの息づかいは止まり、お互い我に返って顔を見合わせた。
ブラウスは乱され、私の両手首には彼に掴まれた後がくっきりと赤く浮かび上がった。
彼はすぐに体を起こし、何も言わずに、ただ自分の手を握りしめている。
「申し訳ございませんシュヴァルツ様。身の程を弁えずにお声をおかけ致しました。このままでは、アカリ様の純潔を奪ってしまわれるように見えましたので……」
ノア君の言葉を聞いてから、シュヴァルツさんに何をされそうになっていたかを自覚した。
それはここへ来てから、私がずっと恐れていたはずのことだ。
しかし私は真っ先に首を横に振り、怒っていないという意思表示をしていた。
突然のことで驚いたけれど、決して嫌ではなかったから。
シュヴァルツさんは立ち上がり、椅子にかけられていた上着を私に放って被せると、軽装のまま部屋の扉を開けて出ていこうとする。
私はすぐに体を起こした。
「どこへ行くんですか!?」
「……寝ていろ」
彼はここから出て行くつもりだ。
それは数時間か、一晩か、数日のことかは分からない。