クリティカルロマンス
不意を突かれた砂のいたずらに心がかき乱される。
背中に回された彼の手の力が次第に強まり、青木さんの吐息が耳にかかった。
思いがけず、胸が弾む。
いっそのこと、このまま青木さんと逃げてしまえば、不安なんてどこかに飛ばされるかもしれない。
それでもいい。
それがいい。
青木さんの背中に自分の腕を回しかけたその刹那、脳裏に浮かんだ高柳さんの顔。止まりかけた時間を無理矢理逆に動かす。
「ごめんなさい」
反射的にその腕から逃れ、鳴りやまない鼓動を強引に押し込めた。